色彩のパサージュ 野田あさひ ひろ・あおき
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ひろ・あおきオリジナル
野田あさひ写真集 色彩のパサージュ
発行年月日:2026年9月
寸法;21x14,9x1,1cm
A5 144p
『色彩のパサージュ』
ガス灯に照らされたパサージュには、商品、広告、衣服、酒、言葉、そして人間の身体までもが、見る者の欲望を呼び起こす像として並んでいる。ヴァルター・ベンヤミンがそこに見たのは、近代都市の繁栄だけではない。人々が夢を見ながら歩き、その夢によって自らも見られ、知らぬ間に形づくられていく場所であった。
本作に満ちる赤や橙、黄の色彩は、温度や歓喜を表すだけのものではない。それらはガス灯のように人物と都市を包み、現実をひととき魅惑的な幻へと変える。街の壁、広告、酒瓶、衣服、化粧、刺青、肌。それぞれ異なるものが同じ光の中で照らされ、互いの境界を失っていく。色彩は世界を飾ると同時に、見る者の視線を導き、何を見るべきかを密かに選別している。
野田あさひは、その光の中を歩く。街を横切り、店に入り、衣服を脱ぎ、他者に触れ、笑い、眠り、再び装いをまとって外へ出る。彼女は鑑賞される対象でありながら、同時に自らの視線と身体によってパサージュを読み替えていく遊歩者でもある。いくつもの入口を選び、無数の装飾に触れ、そのたびに異なる自分を生きながら、次の出口へ向かっていく。
しかし、光が強くなるほど、その外側にあるものもまた濃くなる。剥がれかけた壁、枯葉、土嚢、閉じた扉、無防備な身体、ふと失われる表情。見るために飾られたものの間に、見られることを求めていないものが現れる。それらは華やかな光景の余白ではない。むしろ、装飾の奥で沈黙していた現実が、一瞬だけこちらを見返す場所である。
パサージュの出口で振り返るとき、歩いてきた色彩はひとつの夢のように連なっている。だが、その中で最も強く残るものは、最も明るく照らされたものとは限らない。光を浴びず、名づけられず、ただそこにあったものかもしれない。
私たちは何を美しいと感じ、何を見落としているのか。
私たちは何を見ているのか。
そして、何によって見られているのか。
この写真集は、色彩に満たされたひとつのパサージュである。その出口に立ったとき、見る者は外の世界だけでなく、その光を通過してきた自分自身の姿にも出会う。
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